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限られた農園のみで
栽培される希少な品種。
ひとつ500グラムを超え
日本有数の大きさを誇る。

　かんきつ栽培が盛んな愛媛県八幡浜市は、実は柿の名産地としても知られています。なかでも、市内の国木（くにぎ）・牛名（うじな）地区を中心に栽培される「富士柿」は、園地や農家が限られているため、全国的にも流通量が少ない希少な果実。堂々とした姿と美しい円すい形が富士山に似ていることから、その名が付けられました。　
　代々柿づくりを営む「丸京農園」では、「愛媛はかんきつ王国ですが、日本有数の大きさを誇る柿があることを知ってほしい」との思いで、先代から受け継いだ技術にさらに磨きをかけ、より大ぶりで甘く、形の整った「富士柿」を育てています。その大きさは、直径10センチ、重さ500グラムを超えるものも。管理を徹底した園地で収穫された果実をオリジナルブランド「媛富士」として出荷しています。
　「媛富士」は、他の柿と比べて種がほとんどなく、果汁が豊かで、まろやかな甘さが特長。陽光をたっぷり浴びて赤富士のように輝く姿は、まさに秋の恵みをそのまま閉じ込めた宝石のようです。

サクッと軽やかな食感から
徐々にしっとり濃密な甘さに。
味の移ろいを楽しめるのが
「媛富士」の魅力。

　園地は日当たりの良い段々畑。地面にはマルチシートを敷き、太陽光を反射させて果実の下まで光を行き渡らせることで、色づきと甘みを引き出します。昼夜の寒暖差が大きくなる10月以降、日中に温められた園地が夜の冷え込みで一気に冷えると、果実の糖度がぐっと上がり、園地全体が鮮やかなオレンジ色に染まっていきます。
　収穫された柿は、すぐにアルコールガスで丁寧に渋抜き。外気温に合わせて脱渋室の温度や日数を微調整し、生産者が舌で確かめながら仕上げます。味が整うとすぐに園地から直送されるため、届いたばかりの柿はサクッとした歯ざわりとフレッシュな甘さが広がります。2～3日おくと果肉がしっとりとして甘みが増し、まるでマンゴーのように濃厚な味わいに。さらに熟すとゼリーのようにとろけ、凍らせればシャーベット感覚でも楽しめます。ひとつの果実で味の移ろいを堪能できるのが、「媛富士」の魅力です。
　園地が限られているうえ、収穫時期も短いため、「媛富士」が味わえるのは11月中旬～下旬のわずかな期間。毎年この季節を待ちわびるリピーターも多く、「この柿を食べたら、もう他の柿は食べられない」との声も寄せられています。